Bright!FRONTEO Official Blog

Bright!FRONTEO Official Blog

AI技術の社会実装に向け、産業間のデータをつなぐ触媒であり続ける

2022年9月29日
ALBERT(アルベルト)は、「データサイエンスで 未来をつむぐ」をミッションに掲げ、データサイエンスで世界をつなぎ、より良い未来のために新たな価値を共創することを目指している会社です。各産業におけるデータを掛け算することでデータの価値の最大化を図り、Win-Winの関係を構築するために産業と産業をつなぐ「触媒」であり続けること――それが「CATALYST(カタリスト)戦略の起点」と自社の戦略を説く松本 壮志 代表取締役社長は、データサイエンティストの育成にも力を入れ、日本の競争力確保に貢献する思いを熱く語ります。
本対談では、ALBERTの松本 壮志 代表取締役社長とFRONTEO守本 正宏 代表取締役社長に、事業を通して実現したい社会の在り方、経営者としての考え、現在の課題や今後の展望をテーマに意見交換いただきました。

データの価値を最大化する「触媒」となること

―― ALBERTの経営理念、会社として目指していることについてお聞かせください。

松本:当社は高度な分析力をコアとした、先端技術を活用した分析、ソリューション開発および提供に軸足を置いています。
通信、製造、金融、自動車、流通・インフラ、の5つを重点産業と定めており、現在はこれらの産業の売上高構成比が8割を超えている状態です。
その中で我々は、データの量と質は相関しないという考えのもと、「CATALYST戦略」を打ち出して推進しています。
あくまで例えですが、わかりやすくご説明すると、銀行の預貯金データだけをいくら分析したところで、当たり前の事実しか浮かんできません。ただし、その預貯金データに、通信キャリアの購買データの一部を突合させることで、対象者の嗜好性や消費傾向が見えてきます。さらにそれらに生命保険の一部データを掛け合わせると、この人はどうやら3人家族らしい。かつ、こういう保険を付保しているから、おそらく小学生の子どもがいるのではないか、と類推も可能となります。このように、多様な産業や企業が保有するデータを掛け合わせることで、単独分析では得られなかった新たなデータ価値が生み出され、初めて企業は顧客の需要に最適なソリューションを提供できるようになります。無論、各社のデータポリシーや知財等の越えなければならないハードルはあるものの、近い将来、必ずそのような世界観になると信じています。データの価値を最大活用するために、いかにして産業を超えて「掛け算」できるかが大きなポイントです。CATALYST、つまり我々は「触媒」になることでそれを引き出す役割を担っていきたい。これが戦略に込められている想いです。

同時に、会社のミッションも「We are the CATALYST.」を掲げており、人と人の触媒になることを意識しています。特に技術者によく見られますが、良い意味でも悪い意味でも自分の世界に入り込み、無我夢中に研鑽に注力する傾向があります。もちろんそれは大事なことですが、時に経営戦略とギャップが生まれてしまうこともあります。戦略およびスローガンで「CATALYST」を掲げている以上、社員同士も会社というコミュニティの中で触媒になるという考え方を持たなければいけない。そう思っています。

守本:データサイエンティスト、いわゆるデータを解析していくことにフォーカスしている会社は先進的だと思います。

松本:現在AIを扱う企業は大きく3つに区分されると思っています。
1つ目はプラットフォーマーを目指しているツール提供ベンダーを含めた企業、2つ目は自社プロダクト開発に注力している企業、そして最後に我々のように高度な分析を起点としたAI実装(一気通貫)に軸足を置いている企業です。守本さんのご認識の通り、数多あるAI、DX関連企業の中でも当社の軸足は独自のポジショニングと言えると思っています。

守本:個人的にAIは汎用的に誰もが使えるものだとは思っていません。AIはデータサイエンティストがいないと活用できないと考えているので、そうした意味でこの分野を強くしていく視点はこれから極めて重要です。
FRONTEOが実現しようとしている「フェアネス」は、例えば、本来は法の下で平等であるはずの訴訟や犯罪捜査における公平な判断です。現代社会において、証拠となる可能性のある電子データの量は急増していますが、膨大であるために正しい分析ができない、分析できないから正しい結論が出ない、誤った証拠により不適切な判決が下されるというのはあってはならないことです。医療も同様に、万人が平等に診断を受ける機会が与えられるべきです。経験のある専門医のいる地域でしか正しい診断を受けることができない、という状況が発生するのはおかしいと思っています。その不平等をなくすために、AIで解決しようとするのが我々の目指す「フェアネス」な社会です。その社会の実現のため、我々のAIは専門家の判断を支援するという点にフォーカスしています。

上場企業の定めは数字が会社の「人格」であること

―― 着任された当時の景色はいかがでしたか。

松本:私がALBERTに入社した時、会社規模としてはデータサイエンティストが60人弱、財務諸表においては、損失拡大の傾向が継続している状況でした。
まず、着任直後に幹部に対して現状を認識してもらうために、私自身がどういう戦略でこの会社をリードしようと思っているのかを徹底的に説明しました。
最初の3カ月は私自身で数多くのスライドを作成し、プレゼンテーションをしました。当初は、技術のことを知らない経営者に何がわかるのかと、率直な意見をぶつけられることもありました。正直どうなるかと思いましたが、徹底的にコミュニケーションを重ねることで、幹部陣との戦略合意ができるところまでたどり着きました。そこから、再建計画スタートだ、と船を漕ぎ出したわけです。
おかげさまで、戦略に沿って7カ月ほどで黒字化を達成し、現在もさらなる成長に向け進んでいます。私は起点と戦略を描いただけで、現在の状況を作り出したのは、幹部陣、従業員の総合力の賜物であると思っています。

守本:大変な時期を超えて出航した後、必ずしも順風満帆ではなかったと思います。どんなことがあって、どのように乗り越えたのでしょうか。

松本:上場会社の定めですが、ガイダンス(業績予想)を発表している以上は市場とコミット達成が極めて重要になります。その重要性を浸透させるのに、1、2年かかりました。
我々は株主から付託を受けて経営を行っているので、市場に出している数字は、ある意味で我々の人格に当たります。この数字が仮に、「達成できませんでした」となった瞬間に、株主や市場は会社の人格に対して懐疑的になります。懐疑心を持たれぬよう、まずは、社員にこの数字の大切さを理解してもらうことが本当に難しかったですし、今も課題です。

守本:これは難しい課題です。我々もひしひしと感じており、危機感を持っています。実際に数字の達成が難しい時などは、どのように対応されてきたのでしょうか。

松本:数字に対する認識や会社としての人格形成が徐々にできてきたので、特段、慌てることはなかったのですが、初期の頃は、数字の達成が難しそうだと思ったら、現場で一緒に伴走しました。どこの予測が崩れたのか、それはリカバリーできるのか、いつできるのか、期限を一緒に決めて取り組みました。今は部門単位でだいぶ自走できるようになり、企業としての成長を実感しています。

バッドニュース(悪い知らせ)ほど1秒でも早く、「後にして」は言わない

―― 経営者として心掛けていることがあれば教えてください。

松本:「定性的にも定量的にも、決めた計画を達成する」。これしかないです。心掛けているというよりも、常に自分の中にあるものです。それを実現する上で、最も重要なことは「情報」です。そのため、幹部、社員からの情報取得に関しては非常に気を付けていますね。
社長室は幹部がアポなしでいつでも入れる環境にしており、バッドニュースは1秒でも早く上げてくれと周知しているので、社長室がノックされるたびにドキッとはしますが、これで初動エラーの大半は回避できると思っています。
また、話を聞く際には、「後にして」とは言わないようにしています。どんなに忙しくても、その瞬間に、必ず聞くよう心掛けています。バッドニュースを持ってきた人に対して、「後にして」と言ったら、その人も言いにくくなるものです。

守本:バッドニュースをいつでも受け入れる覚悟が必要だということですか。

松本:そうですね。経営者はバッドニュースを聞くことの方が多いと思います。延長線上の意思決定はそこまで難しくはないと思いますが、唐突かつネガティブな状況の中での意思決定、これがリーダーにとって最も重要な役割の一つと言えると思います。

守本:FRONTEOは創業して19年たち、来年20周年を迎えようとしています。リーガルテックからスタートして、事業も販売地域も拡大しました。しかし、この急拡大に、組織の基盤の一部が追いつかなくなってきました。上場を維持するためにも管理系を固める必要が出てきたのです。
技術は元々あり、それを使う人も育ってきたのですが、計画の達成にどうやって売り上げを伸ばしていくか、という基本的な営業マーケティングが足りない。今はそこを一から、チームの底力を盤石にするためのルールやプロセスを作っているところです。権限委譲は少しずつ広げていますが、自分がしていないことを人にさせるのはだめだなと思い、まずは自分で一から営業・マーケティングプロセスを学びなおし、一度自分でプロセスを作って、さらに導入までやってから、任せていこうと考えています。

松本:経営者の感覚を幹部にも持たせることは、我々の長年のテーマです。属人化を排除して、オペレーショナル・エクセレンスを目指すのは教科書通りである半面、それを指揮する人が組織の中で1人しかいない状態は大変なものです。周りの幹部をいかにして“経営者”にするかは重要な課題と考えています。
対策の一つとして、私は例えば、幹部とのプライベートなコミュニケーションの場でも、軽いテーマを設定し、それについて対話をするようにしています。自社のバランスシートやキャッシュフローをどう見ているか、などです。すると、相手も率直な質問をしてくれるなど、自然と経営視点の会話が行えるようになります。
さらに、経営感覚を養うためには、まずは経営的な知識を身につけてもらい、最終的には「ハート=想い」の部分も重要です。ただ、これが難しい。それでもそうした社員がたくさん育ってくれたら経営者冥利につきますね。

―― ご自身は経営者としての知見をいつ育まれましたか。

松本:会社経営とは何かを学びたくて事業会社やコンサルティング会社で数年働きましたね。経営を学ぶ上で、なんとなく、まずは金融だと思い、その分野からアプローチし、財務諸表分析、各種ファイナンス理論、組織論、戦略理論等々の知識を先に得たうえで、企業買収(買収サイド)を通じて「経営」というものを学びました。
そこで痛感します。知識だけではなにも変えられない、ということを。
例えば、ある企業買収において、経営権を奪取した後、その説明をベンチャーキャピタルや他株主に行った際には、怒号を浴びせられることや、激しい口論なんかも発生しましたね。当時は彼らがなぜ怒っているのかさえ理解できませんでした。論理だけで通用する世界じゃないことを心底理解させられましたね。
そういった経験を通じて、投資家と発行体の関係や、資本の論理で経営を取ったトップが社員からどう見られるか、株主に対してのアカウンタビリティとはなにか、リーダーとして何を成さなければならないのかを30歳前後に、日々打ちのめされながら経験してきました。これは、私にとって非常に大きい経験値になりました。

空飛ぶ冷蔵庫を作る会社にはしない

―― AIを社会実装するために注力されていることは。

松本:我々は取引先を増やす戦略ではなくて、AIの社会実装に向けて腰を据えて中長期的に伴走することができる、各産業のリーディングカンパニーとの関係性を深める戦略を推進しています。それが、資本業務提携先であるトヨタ自動車をはじめ、重点産業のリーディングカンパニーです。
私の一つの価値観として、どんなに優れた技術やソリューションでも活用されなければ意味がない、と考えています。
昔からよく言っていたのが、空飛ぶ冷蔵庫を作る会社にはしないということ。仮にそれが実現したとしても、すごい技術力だと話題になる一方で、絶対に「一家に一台」とはなりません。我々は、そこを追求するのではなく、重点産業が抱えている先端技術を含む課題、これに対してソリューションを提供することに軸足を置いています

守本:実装は重要です。空飛ぶ冷蔵庫は確かにすごいけれど、使われなければ意味がないと私も思います。
私は、実装する際に重点を置いていることが2つあって、1つは、AIそのものが「使えるAI」であること。実際に使えるAIであるためには、データ量が大きくないとダメとか、スーパーコンピューターじゃないとダメといった、制約のあるものにはしたくない。そこを解決するAIエンジンが必要だと考えています。
もう1つは、AIを使う方々、例えば自動車会社や製薬会社において、会社のエースはその分野の専門家です。そこにAIを使う専門家がいるわけではない。逆に、我々の中には、AIの専門家はいるが、製品開発や素材研究の専門家はほぼいない。とすると、結局そこを分離し、AIの専門家の部分は我々が担ってサービスを提供し、お互い「使う」ことにフォーカスしていると思うのですが、そこはすごく重要だなと。

松本:私もそう思います。

守本:FRONTEOはAIエンジンも提供しています。例えば、相手先の専門家は、地球規模のシミュレーションが欲しいわけではない。自分の考えの判断を正しいかどうか教えてくれる、ヒントをくれる、気づかなかったことへの気づきを与えてくれることの方が重要です。そのため、その部分の支援にフォーカスしています。ま
た、これからの方向性として構想しているのは、AIをやっている会社はAIだけを提供するのではなく、例えば、AIを使った創薬会社になるといった展開です。我々が薬の種を発見します、というような会社になっていきたい。それが今後、社会実装されるAIのあるべき姿になっていくのではないかと考えています。

国際競争力のためにデータサイエンティストの育成は必要

―― 人材育成へのお考えについてお聞かせください。

松本:私が入社した4、5年前は、社外向けに一般講座を行っていたのですが、一旦社外への講座提供は全部ストップさせました。当社の大切な資産である、優良なコンテンツをいたずらに外に出すのではなく、“秘伝のたれ”として内部でブラッシュアップし続け、新卒やインターンシップ、中途採用など内部でスキルアップできるような育成カリキュラムを整備することにしました。その後、2年前からまず提携先にのみ社外向けの育成カリキュラムの提供を開始しました。さらに、マーケット全体のDXの潮流を受けて問い合わせが増加したため、今は提携先以外への提供も再開しています。

守本:御社はそこを事業として、支援されているのですね。

松本:はい。自社のデータサイエンティストの育成もありますが、日本のデータサイエンティストは人材不足が社会課題となっており、それを数万人規模にしていかないと、おそらく数年後には国際競争力を失うことになると危惧しています。その問題解決への第一歩として、育成カリキュラムを提携先だけでなく、一般提供する決断に至りました。
これまで取引がなかった、ある領域のリーディングカンパニーからも問い合わせがあり、育成カリキュラムを提供することも増えてきました。重点産業以外にもデータサイエンティスト人材の不足を解消し企業のDX促進を支援していくために、今後もデータサイエンティスト育成に関心の高い業界や企業には注視していきます。

守本:数理系の専門家は、日本の今の産業界においてあまり活躍の場がなかっただろうと思います。現在もてはやされているのは情報系や工学系の人材です。一方で、実際にデータサイエンティストになるには、数理系の知識がないと厳しい。しかし現状のデータサイエンティストを肩書きとする人々の中には、そうではない人も多いでしょう。

松本:“データサイエンティスト”と一言で言ってもスキルセットやレベル感の違いがかなりあるため、そこは我々のような会社がきちんと線引きして一定レベル以上のスキルを持った人材の育成支援をしていく必要があると考えています。日本の競争力確保のためにも喫緊かつ重要な取り組みです。

守本:大学の学部や学科をきちんと整備していただくなど、国の対応も大切です。

松本:そもそも国内にデータサイエンティストの数が非常に少ない背景に、データサイエンスに特化した学部、学科が創設されたタイミングが遅すぎたことにあります。一番早いところで、滋賀大学が5年前に日本初のデータサイエンス学部を開設しています。今は徐々に設置されていますが、スタートの遅れが産業にも影響を及ぼしています。データサイエンティストの絶対数が国内において非常に少ないのが一番大きな課題です。論文の発表数においても中国や米国、欧州と比べて足元にも及ばない状況です。

守本:AI開発の観点からは、大型化が良いと考えられている風潮も問題です。大型化自体は悪いわけではありませんが、用途が異なります。
本当の意味でAIを使っていくには、社会の今の現象を解析するための根本的な技術を自分たちで作ることにもっとフォーカスすることが不可欠です。
FRONTEOにいる数学者たちは、世の中の現象にはシンプルな法則があると考えており、それでアルゴリズムを作り上げてしまう。非常に面白いのが、それが社会現象と結構一致していることです。例えば、現在我々はサプライチェーンの分析を手がけています。ネットワークをベクトル上に置いて、AIにサプライチェーンの一部と世の中のサプライチェーンの構築を学習させて、サプライチェーン全体を生成させてみると、実際に人間が長年かけて構築したサプライチェーンと似たものができます。
また、アルゴリズムは美しくあるべきだと考えています。複雑な、色々と継ぎ足していくようなアルゴリズムではなく、いかにシンプルにするか。ここに我々は価値を感じています。富岳などのスーパーコンピューターも、もちろん優れたものですが、本質を捉えて、精度の高いアルゴリズムを作り出すところにももっとスポットライトが当たるべきです。こうした最先端の技術こそ、日本のAIが再び世界に出る鍵になると思っています。

―― 最後に、今後の展望についてお聞かせください。

松本:よく聞かれるのは、社長をあと何年やるのかという話ですが、そこは決めていません。自分のリーダーシップが、経営や組織、業績、マーケット、社会と相関していると感じる限りは戦い続けます。
会社の展望としては、今の戦略を着実に進めること。M&A戦略は発表しているものの、実業と関係のない企業の買収はまったく考えていません。あくまで当初に設定した、CATALYST戦略を拡大し、ALBERTが触媒として社会実装を支援するケースを増やしていくことが展望です。

守本:新しい一大産業になりますね。ITシステム開発者を派遣する会社は多くありますが、御社はデータサイエンスで産業間に新たな化学反応を起こして世の中を作る、まさに触媒となる事業です。
当社の場合は、やはり言語系のAI、独自開発の美しい数理モデルに基づくAIを世界で一番にしたい。国内には、この業界の勝ち組はまだいないと思っているので、当社が勝ち組になりたいです。そのために、足元をしっかり固めて会社としても成長していきます。

同じカテゴリの記事

よく見られている記事

ja 日本語
Machine Translation by Google. : close x