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【講演レポート】AI活用カンファレンス <リーガルセッション> 人工知能が変えた、コンプライアンス態勢の確立と違反行為の早期発見のための弁護士によるメール監査

2016年8月31日
営業本部 営業支援グループ
7月29日にユーザー企業様をお招きして開催したFRONTEOローンチ記念イベント「AI活用カンファレンス」では、ヘルスケア、ビジネスインテリジェンス、マーケティング、リーガルの4分野における人工知能「KIBIT(キビット)」の活用事例を、20分間のセッションでご紹介いたしました。 この記事では、当日のセッションの内容を順次ご紹介させていただきます。 最後となるリーガルセッションは、企業におけるメール監査の現状と人工知能の活用事例についてです。メール監査についても豊富な経験を持つTMI総合法律事務所の戸田謙太郎 弁護士にご登壇いただきました。 企業の喫緊の課題となるコンプライアンスの強化 不正会計や情報漏えいなど、企業の不祥事にまつわるニュースがメディアを賑わしています。コンプライアンスの強化は企業の喫緊の課題と認識されるようになりました。戸田弁護士は、コンプライアンス強化のポイントについて次のように語ります。 「これには3つの柱があります。ひとつ目は、未然の防止策を充実させること。ふたつ目は、早期発見のための環境を整備すること。3つ目は、有事が発生したときの危機対応です。このうち早期発見で一番重要と言われているのがメール監査です」 公正取引委員会の調査では、おおよそ過半数の企業が、日常的または必要に応じてメール監査をしていると回答しています(※1)。また、海外と取引している企業に対する調査では、55.7%の企業が日常的または必要に応じてメール監査を実施しています(※2)。 この調査結果を受けて、 経済同友会では「外国競争法コンプライアンスへの取組みに関する行動宣言」を発表しました(※3)。この中で、実効性ある外国競争法コンプライアンス態勢を確立するため、違反行為の「早期発見のための方策」のひとつとして、メール監査が明記されています。ここでは、必要に応じてではなく、日常的または定期的なメール監査の実施を提言しており、カルテルの防止のため営業担当者が送受信するメールを対象に、内部監査部門が日常的または定期的に確認することを勧めています。 「このように、多くの企業でメール監査の重要性が強く認識されるようになりました」と戸田弁護士は現状を語ります。

TMI総合法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 戸田 謙太郎 氏

※1 公正取引委員会『企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について』(平成24年11月) http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h24/nov/121128.html ※2 公正取引委員会『我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について』(平成27年3月) http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h27/mar/150327_1.files/150327houkokusyo.pdf ※3 経済同友会『外国競争法コンプライアンスへの取組みに関する行動宣言』 http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2016/160513a.html   弁護士が関与することで早期に事実関係を把握する 実際のメール監査はどのように行われているのでしょうか。膨大なメールを抱える企業は、キーワードなどで絞り込んで監査を進めているとのことです。 「たとえば裏金・カルテル・極秘といったキーワード検索や、対象者を営業担当などに絞り込んだ検索、大きな案件の前後の期間だけのチェックなど、対象を絞り込んでメール監査を実施しているケースが多く見られます」(戸田弁護士) こうしたメール監査は、会社の法務部や監査部が行うこともありますが、多くの場合、弁護士が行うそうです。その理由は、米国や欧州では弁護士秘匿特権によって、弁護士との交信内容や弁護士の指示のもとに準備した資料の提出を拒否できるためだと言います。 「自社内に疑わしい動きがあったとき、早期に社内で事実関係を把握して、独自の判断で社内調査を行うことになります。社員が調査結果レポートを作成した場合、そのレポートを開示しなければならなくなる恐れがありますが、弁護士の指示の元に調査を行えば、弁護士秘匿特権を主張できます。そのために早期に弁護士資格を持つ者を関与させ、その指示の元で調査を実施することが、その後の戦略を迅速に立案する上でも重要になるのです」(戸田弁護士) 従来の検索によるメール監査では限界が このような理由により、弁護士がメールを監査する機会が増えたため、より合理的なメール監査の手法が求められるようになりました。それが、人工知能を活用したメールの絞り込みです。戸田弁護士は「メール監査で一番コストがかかるのは、ひとつずつメールを確認することです。メール監査の場合、一部だけを取り出してサンプル調査する訳にはいきませんから、合理的な方法で監査対象を絞り込む必要があります。そのための最適な方法が人工知能の活用です」と説明します。 従来のキーワードによる検索方法では、どうしても無関係のメールが含まれてしまいます。ある調査では、キーワードによる検索を行って残ったメールのうち、関係のありそうなメールは約20%に過ぎず、ある程度関係ありそうなメールが約30%、まったく関係のないメールが約50%だったそうです。従来の検索にたよったメール監査では限界があると言えます」(戸田弁護士) 人工知能により重要なメールをスコアリング 「リーガル業界では、人工知能のことをTechnology Assisted Review(TAR)と呼んでいます。機械学習アルゴリズムに基づいてメールや文書の関連性を判断する技術で、DOJ、FTC、SECといった米国の政府当局も一定の条件のもとでTARの使用を許容するようになってきています」(戸田弁護士) 人工知能を使ったメール監査は次のように進めます。 まず、人手によって重要なメール、そうでないメールというようにタグ付けし、教師データを作成します。そして、その教師データを人工知能に学習させます。戸田弁護士によると、人工知能に学習させるための教師データを作成するためには、一般的には全体の10~20%ほどのメールをタグ付けするそうです。 教師データに基づいて学習した人工知能がメールを解析し、その結果、それぞれのメールに点数(スコア)が付けられます。5000点だとかなり重要、3000点だと重要といった具合です。このスコアを参考にメールを精査していきます。 浸透しつつある人工知能を使用した絞込み リーガル業界では、TARによるレビュー結果が証拠として認められる傾向にあるとのことです。 「米国では、TARのもとで分類し証拠として提出することが認められるようになったのは、2012年の『Da Silva Moore v Publicis Groupes』という裁判での判断がきっかけであると言われています。それ以降、賛否両論がありましたが、一般的にはTARによるレビュー結果を証拠として提出することが認められる傾向にあります。現在は、開示当事者が文書レビューにおいてTARの使用を望んでいる場合、裁判所が許可することが一般的だそうです。また、2014年以降、政府当局のさまざまなガイドラインにおいても、一定の条件は付くもののTARによるレビューが認められるようになってきました」(戸田弁護士) このように人工知能を使用することによって、今後コスト削減とレビューの早期完了が進むと戸田弁護士は見込んでいます。「一説には、コストが約50%下がるという調査結果もあります。また、独禁法違反の事例では、他社に先駆けて当局に違反行為を報告することにより、課徴金の減免を受けるリニエンシー制度が適用されるため、レビューをできる限り早期に終わらせる必要があり、そのために人工知能が使われることもあります。 人工知能を使ったメール監査は主要な手法のひとつとして今後ますます定着が進むと考えられる」と述べ、戸田弁護士は講演を締めくくりました。 ※このセッションでご紹介した製品・ソリューションの詳細は、こちらのページでご確認いただけます。 http://www.kibit-platform.com/products/email-auditor/
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