いま最も注目されているテクノロジー、AI(人工知能)。中でも、生成AIの一つで自然言語処理に長けたChatGPTは、大企業や官公庁、地方自治体などで導入検討が進められるなど、実用への期待も寄せられています。
各方面からの期待が高まる生成AIですが、実は大量の電力消費を伴い、ひいてはCO2の排出や水の消費の点も指摘されています。「生成AIの環境への影響」という論点はいずれ避けられないでしょう。ただし、AIの利用と電力の大量消費はイコールではなく、AIの電力効率を左右する主な要因はAIモデルの「アルゴリズム」にあります。
このところ「グリーンAI」という、環境問題の解決にAI活用を試みる趣旨のキーワードが聞かれますが、FRONTEOの自社開発AI「KIBIT」は、省電力で環境への負荷が小さく、AIそのものの環境への影響が小さい画期的な「Green Micro AI」。その特長をご紹介します。
生成AIとは
生成AIはジェネレーティブAIとも呼ばれ、テキスト、画像、音声などの大量のデータを学習し、そのパターンや特徴を元に新たなコンテンツを作り出せるAIです。中でも2022年末から急速に話題となったChatGPTは、史上最速、最大の変化を人類にもたらすとも言われ、研究者や開発者だけでなく世間から注目を浴びました。チャット形式で自然にやりとりでき、情報収集などへ活用できる可能性が広がるこの画期的な技術は、生成AIの代表格と言ってもいいでしょう。
生成AIへの期待と環境問題
生成AIはカスタマーサービスやマーケティング、クリエイティブなど、その活用範囲は広く、あらゆる分野で大きな変革をもたらしつつあります。
一方で、ChatGPTに限らず生成AIの急速な普及による電力の大量消費も指摘されており、例えば検索エンジンで「生成AI 環境問題」と調べると、関連記事がいくつも見受けられます。生成AIを支える技術であるディープラーニングは電力を含む資源を多く必要とするため、AIの進歩が未来を明るくする一方で、技術の進展とともに環境への配慮も求められているのです。
ChatGPTをはじめとする生成AIの電力消費の実態
生成AIは、クラウドサーバーやデータセンターで膨大な情報処理を行い、その際に大量の電力を消費します。特にディープラーニングによる大規模言語モデル(LLM)はパラメーター数が多く、必要な計算量が従来のAIより飛躍的に増加しました。AIモデルのパラメーター数が増えると、推論・トレーニング(学習)で必要なGPUの数が増え、ひいては消費電力量も増加します。
AIモデルとは?
AIのモデルを作るとは、データを元に特徴や法則を見つけるということです。生成AIをはじめAIで主流のディープラーニングでは、AIモデルの入力から出力の間には図のように多くの計算層が存在し、モデルによっては何千億以上という数のパラメーターを持ちます。
AIモデルで行うトレーニング(学習)・推論と電力消費の関係は?
AIは、トレーニング(学習)を経てモデルを構築し、そのモデルを用いて推論し、結果を出力します。生成AIなどのディープラーニングモデルのトレーニングでは、まずパラメーター調整、つまりネットワーク内部の結合を調整する計算が大量に行われます。そうして構築されたモデルで推論を行ってアウトプットを出力する際にも、再びコンピューターが膨大な計算を行います。
このように生成AIのトレーニングや推論を行う際は、各計算層で大量の電力を消費しながら計算が行われているということになります。
ChatGPTはどのように電力を消費する?
ChatGPTは人と変わらないほど自然な文章を生成しますが、これは「次の単語(トークン)を予測し続ける」ことに特化した技術によります。質問への回答文章を生成する「推論」は、ChatGPTを使うユーザーのコンピューターやスマートフォンではなく、クラウド上のサーバーにて行われますが、この一見単純な「次の単語を確率的に予測する」過程で大量の計算を要し、電力を消費します。
また、ChatGPTのモデルがその驚異的な能力を持つまでの「トレーニング」フェーズでも、公式の公開情報はありませんが、サーバーでの計算で膨大なエネルギーが必要とされたことは想像に難くありません。
電力消費とCO2排出、水消費の関係
電力を消費するということは、その電力の発電の際にCO2(二酸化炭素)に代表される温室効果ガスが排出されるということです。さらに、サーバーの稼働による排熱の冷却システムでは真水も必要とし、例えばChatGPTにおいては、20~50の質問ごとにサーバーが500ミリリットル入りのペットボトル1本分の水を消費すると試算されています。
参考:https://www.businessinsider.jp/post-268695
企業に期待されるのは、AI導入とESG対応の両立
AIがここまで進化した今、多くの企業は自社の発展と成長を見据え、何らかの形でのAI導入を検討していると思われます。
一方、企業に対してはESG*情報の積極的な開示が求められる流れが加速しています。これは、機関投資家にとってESG情報が企業の成長性や持続性を評価する上で重要であり、ESGの観点から投資判断をするという「責任投資」が求められるためです。端的に言えば、企業の円滑な経営にはESGへの対応が欠かせないのです。
企業が大規模なAIを導入・運用した場合、環境(E: Environment)の観点からは必ずしもプラスにならない可能性もあるといえるでしょう。しかしその懸念の一方で、AIを導入しない選択肢は現実的にはありえません。このジレンマの中、企業には、AIの導入と環境への貢献や社会的課題へのアプローチとの両立がまさに期待されているところなのです。
*ESG:環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance) に配慮した経営などの活動。
環境にやさしい「Green Micro AI」のKIBIT
FRONTEOの「KIBIT」は、高精度のテキスト解析で企業の課題解決を支援し、かつ極めて省電力でESG視点のアプローチをも満たす、他にないAIエンジン。環境にやさしい(=Green)、パラメーターの少ないシンプルなアルゴリズム(=Micro)のAI、「Green Micro AI」です。
これはKIBITの、パラメーターが少ないシンプルなアルゴリズムによるものです。計算コストの高いディープラーニングに頼らず、数学的アプローチを最大限に活かすことで、環境への負荷が小さく動作も軽いAIを実現しています。必要最低限のパラメーターで高い効果を発揮し、データセンター並みのGPUではなく通常のPCのCPUレベルで、極めて省電力で高速にテキストを解析・学習できるのが強みです。
省エネなAI「Green Micro AI」であるKIBITの3つの特長
1. CO2排出量の比較(単位:lbs)
FRONTEOのAI「KIBIT」は、ディープラーニングによる自然言語AIと比較して、CO2の排出量が圧倒的に少量です。
※1 Energy and Policy Considerations for Deep Learning in NLP, College of Information and Computer Sciences University of Massachusetts Amherst (Jun 2019) から抜粋
※2 日本のCO2排出量及び日本の人口からFRONTEO作成
※3 ※1の論文と同様の計算方法により、FRONTEO作成
2. シンプルな構造を実現
KIBITは、世界で起きるすべての現象は数式で表現できるという研究者たちの考えの下、機械学習の一形態でディープラーニングとは異なるアルゴリズムを活用。
シンプルな数学的アプローチで高い精度を実現しています。因果関係を解析する代表的な大規模モデルと比較すると約400分の1の大きさです。
KIBITが「Green micro AI」へ成長した背景
KIBITは10年以上前に登場し改良を重ねてきた、FRONTEOの自社開発AIエンジンです。その起源は米国訴訟における日本企業支援でした。
訴訟においては膨大なデータの中から証拠を見つける必要があり、その課題解決を目指してAI「KIBIT」は開発されました。「エキスパートである弁護士の労力を最小にし、最速で目的を達成する」ためのアルゴリズムは結果的に、ディープラーニングにまさる高精度で、しかもディープラーニングの課題である消費電力が少ない小回りのきく「Green micro AI」となったのです。
持続可能なAI社会の構築へ、技術と環境の調和を促進
環境への負荷が小さく、動作が軽いうえ教師データも少なくて済むKIBITの実装のしやすさは、社会実装のハードルを下げることにもつながっています。事業のミッションをAIによってより高い次元で実現しつつ、ESGの観点から環境に配慮した活動経営も目指したい企業のためのAIエンジンです。
KIBITは自然言語処理を活用したテキスト解析で訴訟支援・フォレンジック調査、ビジネスインテリジェンス、創薬・ライフサイエンス、そして経済安全保障と、多岐にわたる分野でエキスパートの支援を推進していきます。