Bright!FRONTEO Official Blog

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もしも…訴訟費用が用意できないのに訴訟を起こす必要が出てきたら

コーポレートコミュニケーションチーム

訴訟ファイナンス、訴訟ファンド、サード・パーティ・ファンディングなど、呼び方は様々ですが(ここではサード・パーティ・ファンディング(TPF)とします)、国際訴訟・国際仲裁において高額な弁護士費用などを肩代わりするサービスが、近年イギリス、アメリカ、オーストラリアで盛んに見られるようになり、アジアでもシンガポール、香港で広がりを見せてきています。

契約違反や特許侵害があるのに「特許訴訟は高くつく」「多額の弁護士費用を自社では負担する用意がない」などの理由で訴えを起こすことを躊躇する、または諦める企業に対し、訴訟・仲裁の費用を肩代わりする代わりに、勝訴した際に得られる賠償金の10~40%をTPFが得る、もしくは法律事務所とTPFで訴訟費用を折半し、勝訴に終わった場合には負担した額の数倍を企業側から受け取る、といったサービスを提供しています。

この度FRONTEOでは、クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所 東京オフィス代表 / パートナー ライアン・ゴールドスティン米国弁護士とIMFベンサム 最高投資責任者(アジア)トム・グラスゴー 氏を招き、それぞれ「日本企業の新しい訴訟 / 仲裁戦略 ~初心者でもわかる(できる)米国訴訟におけるサード・パーティ活用法~」「紛争解決への資金提供 ~リスク管理、コスト削減、紛争解決の収益化~」と題し、日本企業が攻守に備えるために知っておくべきサード・パーティの利用法、そして、法務予算や社内リソースへの負担を減らす、サード・パーティによる訴訟/ 仲裁費用の基本概念とその使用方法について語っていただきました。以下に、セミナーの内容をまとめて紹介します。

「日本企業の新しい訴訟 / 仲裁戦略 ~初心者でもわかる(できる)米国訴訟におけるサード・パーティ活用法~」(ライアン・ゴールドスティン米国弁護士)

日本企業に知っておいてほしい
アメリカや中国、韓国の企業はビジネス戦略としてすぐに訴訟を起こします。訴える権利があるのであれば、その権利を活かそうという考えからです。しかし、日本企業は、訴える権利があったとしても、訴訟を起こす前に話し合うことを好みます。相手がアメリカや中国などの国際企業ともなると、1年、2年と交渉を引き延ばされて、いざ損害賠償請求をしようとしても遅く、プレッシャーをかける機会を逸してしまいます。日本企業が最初から訴訟に踏み切らないのには2つの理由があると思います。一つは莫大な費用がかかること。確かにアメリカの訴訟は高いのですが、勝訴したり和解に至ったりすれば弁護士費用よりも多くの金額を得ることができます。もう一つの理由は、相手側からの反訴を恐れるからです。知財関連であれば相手側も特許を持っているかもしれませんが、それでもいくらでも戦いようはあるのです。やはり最大の理由は訴訟費用ということになりますが、訴える権利を活かさないと企業にとって不利になるので、訴える権利があるのであれば、一緒に考えて解決できる方法を考えたいと思っています。

TPF のコンセプト
アメリカではメリットのあるクレーム(契約違反、特許侵害)があれば訴訟で解決すべきという考え方があります。訴訟・仲裁に投資する事業者(TPF)が、まるで株を買うように投資し始めています。2億円の投資(訴訟・仲裁費用の負担)で6億円、8億円という金額が得られるのであれば、投資したい、というわけです。TPFでは、訴訟・仲裁の費用を全額負担する代わりに、勝訴した際に入る金額の〇〇%を申し受けるというやり方もあれば、企業とTPFが組むのではなく、法律事務所とTPFが組んで、企業からの成功報酬を法律事務所とTPFで分けるというやり方もあります。成功報酬ではなくても、典型的なファンディングではTPFが弁護士費用を支払うので、弁護士側も安心です。

ただし、あくまでも投資であるため、TPFは、訴訟・仲裁の勝率、損害賠償額がいくら取れるかを重視しています。訴訟を起こす場所、訴えの内容、どの程度の期間がかかるか、弁護士の質など、様々な観点から投資するかどうか判断しています。

 

TPFの法制度化
かつては英国コモンロー上の「訴訟幇助禁止の原則(Maintenance and Champerty)」に基づき、第三者による訴訟の資金提供は禁止されていました。現在では法改正が進み、TPFが法制度化され、違法ではないところがほとんどとなっています(アイルランド、アメリカの特定の州では認められていません)。日本は現在ディベートが進められているところです。

 

「紛争解決への資金提供 ~リスク管理、コスト削減、紛争解決の収益化~」(トム・グラスゴー 氏)

TPF 事業者の立場から
IMFベンサムは世界でも最大規模のTPF事業者で、企業間紛争や仲裁、倒産処理請求、クラスアクションなどの訴訟費用を引き受け、その代わりに回収額の一部を受け取ります。敗訴の場合には一切の返済、資金負担を事業者に対して求めることはなく、勝訴、和解などで賠償金を得たときにのみ、事前に定めた割合によってコストを回収します。

TPF活用のメリット
IMFが企業の法律顧問やCFO、CEOを対象に、訴訟や仲裁に対する取り組みに関する聞き取り調査を行ったところ、現在ビジネスに求められていることとして、1) 少ないリソースで多くを成し遂げること 2) 複雑な国際社会の中でリスクを管理し、企業の利益を守り、競合よりも強い企業イメージを打ち出すこと 3) 訴訟を収益化すること が多く挙げられました。

リソースが限られる中、内部リソースの活用が急務でありながら、それだけでは対処しきれない難題を抱えている現代の企業において、利益のバランスを考慮した結果、紛争を避けることを選ぶ企業も出てきた、とグラスゴー氏は語ります。追及するのをやめたり、好ましくない条件をのんで和解したりしているのです。こうなると、企業の利益のために立ち向かう用意のない、脆弱なイメージをさらしてしまうことにつながります。

かといって、訴訟という方法を選択すると、多くの企業は自己資本に頼ることになるので、企業が一手にリスクを負うことになり、本体業務に活用すべき予算を訴訟に転用しなければならないという状況が多いのが実際のところです。

そこでTPFを活用することで、本体業務に必要な予算を担保し、請求に関してもリスクを負担することなく価値を生み出すことが可能となります。企業の評判という面から言っても、請求の申し立てをすることで、強い企業イメージを市場に発信することができます。世界中の訴訟や仲裁の経験豊富なTPFと協力することで、高い専門性を有した強力なリソースを味方につけることに成功したということを市場に周知できるのです。

小・中規模の企業に限らない
訴訟・仲裁案件に晒されて資金調達に苦労するのは、小・中規模の企業に限った話ではありません。大規模企業や財閥企業にも予算の制限はあり、大規模の事業体ともなると事業部門が細分化されていて、そこで厳格な予算管理がされているため、訴訟に対応するための柔軟性が乏しい場合もあります。法律事務所も例外ではなく、成功報酬ベースの契約を結んでいる場合、事件が解決するまで報酬が入ってこないことになります。その間、人件費、賃貸料、その他間接費も支払わなければならず、これが一定のリスクとなっていきます。TPFは、このように、小・中規模から大規模の多国籍上場企業に至るまで、様々な規模の企業の財務・法務部、リスクコンプライアンス、調達部門だけでなく、弁護士事務所に対してサービスを提供することで、それぞれの企業のリスク管理、コスト管理の最適解を探っています。

様々な方法の中から企業にとって最適なものを
IMFでは、商事訴訟、紛争事件、国際仲裁(投資協定に基づく仲裁を含む)、集団訴訟、破産事案、裁判外紛争解決、ADR、単純な債権回収など様々な案件に資金を提供しています。もっともシンプルなのが単一の請求を支援するというやり方ですが、多数の訴訟によってポートフォリオを構成するというやり方もあります。訴訟事案すべてに勝訴しなかったとしても、そのうちのいくつかに勝訴すれば、そこからコストを回収するという方法です。

そうは言ってもビジネスなので、IMFでも一定のリターンを求めていくことになります。ノンリコースという条件があるので、もしも敗訴に至った場合、リターンを求めることはありませんが、勝訴という形で案件が終結した際には、コストの回収を求めていくことになります。回収方法としては、成果金に一定のパーセンテージを当てはめる場合と、投資に対する倍率を設定する場合、あるいはそれらの組み合わせ(一般的には、いずれかの高い方)で求めることになります。どのような投資商品にも共通することですが、リターンの割合は、リスクが高ければ高いほど高く、投資期間が長ければ長いほど高くなります。専門性の高い紛争の資金提供においては、投下資本の1~4倍、あるいは賠償金などの成果金の10~40%というのが一般的です。

事例紹介
シンガポールで実際にあった国際仲裁2案件の事例を紹介します。いずれも長期プロジェクトを不当に打ち切られたというものです。訴訟の額としては、一つは3000万米ドルでもう一つが1億2000万米ドル。当該企業が依頼した弁護士の費用が約600万米ドル。IMFが案件を査定した結果、一つは確率の高い案件だがもう一つは弱いと判断したたま、パッケージとして取り扱い、リスクの分散を図りました。IMFでは、全ての費用を負担し、勝訴した場合には30%を求めることを提示しましたが、クライアント側が強く抵抗したため、コストを分担するというアプローチを提案しました。IMFのリターンは減りますが、リスクも分散することができるというわけです。

最後に、IMFが資金を提供する場合と企業が自己資金で賄う場合、半々で負担する場合、キャッシュフローのインパクトがどのようになるのかのシミュレーションが紹介されました。企業に潤沢な資金があるのであれば、外部から訴訟ファイナンスを取りつける必要があるのか、という問いをよく耳にすることがありますが、そのような場合、訴訟が継続する期間のキャッシュフローのインパクトを認識する必要があります。本体業務への投資、リターン、ROIを吟味し、最善のシナリオを選択することで、リスクを回避し、一定のリターンを得ることが可能となります。