Bright!FRONTEO Official Blog

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会社経営に今も生きる防衛大学校で身に着けた「やり遂げる力」

2021年10月27日

1946年の創業以来日本の教育を支えてきた学研グループ。現在では教育事業に加え、医療福祉事業も手掛け、地域と連携した安心・安全な暮らしを提供しています。その学研グループを率いる宮原博昭社長とFRONTEOの守本CEOには、防衛大学校出身で経営者、さらには「社会貢献したい」という強い志という共通点があります。社会貢献に対する並々ならぬ熱意を持つお二人に、防衛大で過ごした学生時代の経験から学んだこと、会社経営にもつながっている教え、これからの両社の展望について話を聞きました。

(左)株式会社学研ホールディングス 代表取締役社長 宮原 博昭氏、(右)株式会社FRONTEO 代表取締役社長 守本 正宏

 

日々の厳しい鍛錬で鍛えられた精神力

 

将来自衛隊の幹部自衛官として必要な識見および能力を与え、かつ、伸展性のある資質を与えることを目的とした訓練を行う防衛大学校においては、毎日の厳しい訓練に加え、遠泳やカッター訓練など毎年大きなイベントが用意され、仲間と協力して事に当たる姿勢、困難なことでもやり遂げる力が養われると二人は声を揃えて言う。

 

— 厳しい訓練からどのようなことを学びましたか?

学研ホールディングス代表取締役社長宮原氏(以下 宮原):6時に起床して乾布摩擦、夜中に不定期に行われる非常呼集(フル装備の戦闘態勢で真っ暗な中、銃を持って走る)、潜水訓練など、防衛大での訓練は厳しいものが多かったと記憶しています。

FRONTEO CEO守本(以下 守本):学生時代に徹底的に鍛えられましたよね。

宮原:レンジャー五訓というものがあって、1.飯は食うものと思うな、2.道は歩くものと思うな、3.夜は寝るものと思うな、4.休みはあるものと思うな、5.教官・助教は神様と思え、という内容なんですが、確かに厳しかったけれど、私はここでやり遂げる力をつけたことが後々の自分の人生に大きく影響していると思っています。「道なき道を進む」、まさにそれですね。

守本:防衛大では、それまでやったことのないことを突然やらされるということが日常的にありました。最初は勿論辛いです。辛いのですが、続けていくと形になるのです。宮原さんの言うように「道なき道を進む」、これを続けることで「道なきところに道」ができてきます。

宮原:私は先輩や後輩とのつながり、恩師との出会いも大きかったなと思いますね。彼らがいたからこそ辛い訓練も乗り越えることができました。

 

経営戦略の面白さを学ぶ


知識経営の生みの親として知られる野中郁次郎先生によるマーケティングの授業を4年間受けることができたことが、その後の人生に大きく影響することになる。宮原氏はこの経験を「経営の原体験」と呼ぶ。

— 防衛大学校で学んだ内容で、現在の経営に結びついていることはありますか?

 宮原:防衛大の教育は、文部科学省の定める大学設置基準に準拠し、教養教育・外国語・体育・専門基礎の科目と専門科目(人文・社会科学専攻及び理工学専攻)を一般大学と同じように教育する教育課程と、「自衛隊の必要とする基礎的な訓練事項について錬成し、幹部自衛官としての職責を理解してこれに適応する資質及び技能を育成する。」の方針のもと行われる訓練課程から成っています。私の在学時には野中郁次郎先生が4年間マーケティングの授業を担当されていて、そこでの学びが民間企業での生活に大きく生きていると感じます。

野中先生の授業では、カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』を読んだ後に、それまでの様々な戦いの検証をするのです。検証対象は、軍人の戦いだけでなく、民間企業の戦いにも及びます。つまり、MBAのコースで扱うような、コカ・コーラとペプシの比較広告によるコーラ戦争や、ハインツのケチャップのプラスチックボトルに関するケーススタディも、具体的に紹介してくれたのです。これが、訓練課程の作戦の部分と重なって非常に面白く思いました。

他にも、戦い方の検証として、連合艦隊(タスクフォース)の司令部に焦点を当て、日露戦争(1904~1905年)の日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を破った旧日本海軍連合艦隊司令長官 東郷平八郎と、太平洋戦争(1941~1945年)で連合艦隊司令長官を務めた山本五十六、両司令部の在り方を比較分析する授業もしてくれましたね。今にして思えば、これが私の経営の原体験になっていると思います。学研でも学校・家庭・塾と連携すべくタスクフォースを作っているんですよ。

守本:先ほど話に出た、訓練から学んだことにも通じるのですが、私の場合、今も生きているのは「諦めない力」ですね。我々は日本にまだデジタルフォレンジック(不正調査)やディスカバリ(証拠開示手続き)といった言葉が入ってきていない時代からそれらのビジネスを立ち上げ、ディスカバリのノウハウが不足しているために不利な状況に追い込まれている日本企業を救いたいという気持ちで事業を推進してきました。誰も歩いたことのない道を突き進んでいくことの覚悟は、防衛大の訓練を経験しているからこそできていたものだと思います。今は辛いし苦しいけれど、乗り越えたときに栄光が待っている、それを知っているから、栄光を目指して踏ん張ることができます。

宮原:まだAIブームじゃなかった時代からAIをやろうと思うなんて、すごいですよね。もっと伸びて世界に羽ばたくと思います。

 

恩師の存在


— 宮原さんが着任されて、学研さんのイメージが変わったようにお見受けするのですが、何か意識されていることはありますか?

宮原:私自身は命懸けで死ぬ気でやる、ということを心がけています。それができるのは、私の場合、学生時代に恩師と呼べる存在に出会えていたからだと思っています。恩師に出会えるかそうでないかで本当に違ってきます。防衛大の4年間の寮生活は厳しかったし大変だったけれど、必ず誰かがそばにいるので、皆頑張れたのだと思います。

最近はそんな「恩師」と呼べるような人になかなか出会えなくなってきています。大きくなるにつれ親の言うことなんかは聞かなくなってくるので、第三者が恩師という立場でいてくれると、何かに躓いたとき、挫けたときでも頑張って成長できると思います。子どもは本当に狭い世界で生きていて、些細なことで躓いてしまうのですが、そういった子どもと、その子に会った「恩師」のマッチングなんかをAIには期待しています。いじめに悩んでいる都会の子と、大自然の中で暮らしている大人を何らかの形でマッチングして、自然体験を通じて悩みを吹き飛ばす、なんていうこともできたらいいですね。

守本:現在FRONTEOでは、自分が知りたいことの答えをAIが見つけてくるというシステムを提供しています。それと同時に、「自分が知りたいことを知っている人」を見つけてくるというシステムも提供しています。これをうまく活用すれば、宮原さんのおっしゃるような、自分に合った先生を見つけてくれたり、適切なアドバイスをしてくれたりする人を探す、なんてこともできるのではないかと思います。教育の現場への展開も視野に入れたいですね。

 

教育の重要性


— 教育業界において、今後AIはどのように活用されていくと思いますか?

宮原:教育は今、明治以来の過渡期にあると思います。よい先生に出会えるか否かで子どもたちの幸せ度合いが変わってしまうんです。特定の教科、例えば算数の先生が苦手になると、途端に算数を勉強しなくなるんです。勉強しないから分からなくなる。この悪循環をカバーできるのがAIなんじゃないかと思っています。トップレベルの指導力を持つ先生のAI版を作って、それが安く提供できたら、すごく日本のためになると思います。

しかし、所得格差や地域格差というものも依然存在しています。進学塾に通わせようとすると年間30万円以上の費用がかかってしまいます。地域差についてはGIGAスクール構想などもあって改善されつつありますが、安定した通信環境が利用できない離島や過疎地域においては、都市部との格差が拡がりつつありますね。都市部に住んでいる層だけで国を回していくことはできません。新鮮な志を持って国を変えていこうという、地方の地頭のよい人たちが常にいる国が強いと思っています。日本は人でしか、つまり、人材を育てることでしか生きていけない国だから、そこを何とかAIの力でカバーしてもらいたいと思いますね。

守本: FRONTEOは元々情報格差をなくしたいと思って事業を興した経緯があります。本来公平であるはずの訴訟や犯罪捜査なのに、証拠を見つける技術の有無によって結果が変わってしまう。証拠が見つけられないからといって訴訟そのものを諦めてしまう、それはあってはならないことです。それと同様に、地方で専門医がいないクリニックでは認知症が見つけられない、という医療格差をなくそうと、認知症診断を支援するAIを開発したりもしています。

お医者さんの技量をAIに落とし込めるのであれば、教育の場でも使えるものが私たちにもできるのではないかと思います。先生と生徒のやり取りの中で何を見つければよいのか(今わかっていないな、というのを見つけるのか、同じところを間違えるという特徴を見つけるのか)、そのあたりの「見つけるべきポイント」さえ教えていただければ、FRONTEOのAIが対応できると思います。

宮原: FRONTEOでは児童相談所に寄せられる児童虐待の相談・通報の履歴から、早期対応が必要と判断されるものを職員が優先的に確認できるようなシステムを提供していますが、あれなんかも興味深いですよね。

 

今後の展望


— 学研さんでは理想的な教育ができる施設などを今後立ち上げるご予定などはお持ちですか?

宮原:私は教育で育てられた典型的な人間だと思っています。防衛大は諸外国における士官学校として位置づけられています。教育メソッドが確立しているというのもありますが、防衛大の寮生活がその後の人生に与えた影響は大きいと思います。怖いものはないと言えるくらい、防衛大の4年間で心身ともに鍛えられました。今は民間に出ていますが、よい教育を施すには、ある程度外部と遮断された環境も必要だと思うくらい、防衛大の教育は僕は好きですね。

 今後は、大学まで一気通貫で教育が行える施設を作って、教育学部や看護学部など、学研の教育事業や介護医療事業につながる教育を行いたいという思いはあります。ほかにも、病院もやりたい、とも思っています。

守本:他国との差が開いていくという声もありますが、私は日本人の力をまだ信じています。FRONTEOという会社でAI事業をグローバルに展開していて改めて思うのですが、計画力も重要ですが、無我夢中で実行する力が極めて重要で、その結果、何かを成し遂げ、目標や夢を実現することができるのだと確信するようになりました。教育においても、合理性だけでなく、夢や目標に対してがむしゃらに向かっていき、人と競う力や「やらなければならないことをやり抜く力」を身につけられるようにして、底力を上げられるような国にしていきたいと思っています。

もちろん、我々は、最後までやる、勝つまでやる―防衛大で身に着けたこの力を武器に、日本のAIが世界でナンバーワンになる活動をやり抜き、実現したいと思っています。

 


GIGAスクール構想(文部科学省)

・1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する
・これまでの我が国の教育実践と最先端のベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す

https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_1.pdf

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