企業の米国進出に際し、必ずと言ってよいほど発生するのが「訴訟リスク」です。そのリスクをコントロールすることで、実際に訴訟が発生した時に企業の損失を最小限に食い止めることが、企業の成長に大きく関わり、また、グローバル企業の法務担当者に求められている役割の一つです。こうした中、本書では米国訴訟や米国当局・捜査機関からの調査・捜査の際に必要となる「ディスカバリ(証拠開示)」について、豊富な経験に基づいたエピソードを交えながら、実務知識を弊社代表取締役の守本正宏が紹介しています。
米国民事訴訟では、審理の前に原告・被告双方が訴訟に関係する情報を開示する「ディスカバリ」という手続きがあります。昨今は情報のほとんどが電子データなので「電子(Electronic)」の頭文字を取り「eディスカバリ」とも呼ばれていますが、現在、日本企業の対応力は必ずしも適切・十分とは言えません。なぜなら、様々な法務シーンでディスカバリの必要性・重要性が増す一方であるのに対し、正しい手順と対応策が十分に知れ渡っていないからです。
また、証拠データの処理・閲覧作業にあたっては「情報漏えい」のリスクも生じます。こうした被害を100%防ぐことはできないとしても、先を読み、対策を立てながら計画を進めることで、相応のリスクヘッジを行うことは可能です。こうした「エビデンスコントロール」こそ、いまや組織防衛や企業の安定成長において不可欠であると考えます。