Bright!FRONTEO Official Blog

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【CTOインタビュー】FRONTEOが描くリーガルテックの未来について

2018年5月24日

2003年にリーガルテック事業から出発したFRONTEO。
今回、FRONTEOが描くリーガルテックの未来について、FRONTEOのCTOでもあり、行動情報科学研究所の所長でもある武田にインタビューを行いました。その様子をお届けいたします!

※Wantedly(2018年5月18日)からの転載です。

武田 秀樹 ―取締役 最高技術責任者 行動情報科学研究所 所長―

2009年FRONTEO(当時UBIC)に入社。NLPを軸とする人工知能関連技術の研究・開発を主導し、人工知能エンジン「KIBIT(キビット)」を開発。米国のリーガル分野で実績を上げ、他分野へと適用範囲を拡大し、次々と製品化を実現している。

リーガルビジネスの世界的な状況について

リーガルビジネスの市場にもいくつか種類がありますが、大きいのはeディスカバリ※¹という米国を中心とした国際訴訟に関連する領域で、年率15パーセントで伸びています。企業内にあるメールなどのコミュニケーションデータや報告書、技術文書といった企業内文書の中から証拠を探し出すという業務で、これらの自然文で書かれたテキストが分析のほとんどになります。Web上のデータのみならず、このような社内データもビッグデータ化が進行しており、証拠を探す際に取り扱うデータ量が増えていることが、市場拡大の大きな要因です。一方で、市場内の単価の引き下げ圧力は近年高まっている状況です。これが何を指すのかといえば、従来通り、人の力のみに依拠したサービスメニューで、このビジネスを進めていくには近く限界がくるということです。eディスカバリのアウトソーシングサービス※² を提供するサービスベンダーは、今後厳しい戦いを強いられることになり、ここ数年見られる米国サービスベンダーの統廃合は今後も進むと予想されます。

※¹  eディスカバリとは、米国の民事訴訟における証拠開示手続きのうち、特に電子化された文書、データを対象として行われる手続きのことを指します。
※²  eディスカバリのプロセスを進めるために、通常企業はアウトソーシングサービスを利用します。

一方、業界にソフトウェアを提供するテクノロジーベンダーについてですが、この業界におけるテクノロジーベンダーはエンドユーザーに直接商品を届けることはなく、基本的にサービスベンダーを通じて、その技術を市場に届けることになります。先述したように、ユーザーであるサービスベンダーの統廃合が進んでいきますので、販売先の減少が起こることで、結局は少数のサービスベンダーと集中的に付き合っていくという市場状況になっていきます。そのため、テクノロジーとサービスが別々の企業体であることの意味が薄れていくと考えられます。

また、ここ約10年のリーガルテック業界におけるテクノロジーベンダーの動向を俯瞰すると、企業規模がほどよい規模に成長したところで大手IT企業に買収されるも、買収後の新規開発が滞り、プレイヤーとしては消えていくという状況が継続的に見られます。経営者がExitしてベネフィットを得ることと、その結果、業界に対して、成長した企業およびそのテクノロジーの影響が、必ずしも良い形で相関している訳ではないという現実があります。

FRONTEOの特異なポジション

このようなeディスカバリ市場の動向を踏まえたとき、FRONTEOの置かれている状況は、特異であるといえます。まず、FRONTEOは、リーガルテックのプレイヤーとして、サービスベンダーとテクノロジーベンダーという二つの顔を持っています。サービスベンダーとしてのFRONTEOが得意としているクロスボーダー案件(米国外の企業の訴訟対応。海外本社と米国本社、米国弁護士事務所、本社弁護士事務所とステークホルダーが多く、且つ各地に分散しているため、案件のコントロールが難しい)は、前述した米国の価格引き下げ圧力を受けづらく、米国内でしか対応できない他のサービスベンダーに比べて有利であること。これはeディスカバリのサービスベンダーのほとんどが米国企業である中で、FRONTEOが日本発・アジア発の企業であることに起因しています。

また、テクノロジーベンダーとしてのFRONTEOは、従来からの強みであった、英語以外の言語が正しく処理できるという強みに加え、言語解析エンジンKIBITを軸に、この数年eディスカバリ以外の領域(金融コンプライアンス、特許情報解析、人事面談記録やエントリーシートといった人事系ドキュメント解析など)において、訴訟の証拠発見以外の解析を目的とする様々な種類のテキストデータの解析の経験を積んでいます。その結果、テキスト解析の汎用的なノウハウと解析エンジンのブラッシュアップが進んでいることが挙げられます。このような多様な解析への対応は、他のeディスカバリのテクノロジーベンダーには見られません。ただ、裏を返せばここ数年は、社内の技術開発のリソースの多くを、新規分野の立ち上げに優先的に費やしてきたとも言えます。

しかし、昨年度eディスカバリ以外の新規事業の黒字化の目途が立ったこともあり、現在はeディスカバリ領域に他分野で蓄積されたノウハウを還元するための新しいAI Reviewソフトウェアの開発を進めています。また、サービスプラットフォームとして2010年からFRONTEOの訴訟支援サービスを支えてきたLit i Viewについても、他のテクノロジーベンダーには見られないオールインワンの良さを保ったまま、スケーラビリティの向上による高速化や、ソフトウェアのUX上のフレキシビリティを上げるため第二世代の開発が進んでいます。

eディスカバリ フロー

第二世代のLit i ViewやAI Reviewソフトの開発を進めるにあたり、我々がサービスベンダーとテクノロジーベンダーの両方の顔を持っていることが極めて重要です。2014年から2016年の間、FRONTEOは3社の米国サービスベンダーを買収しています。米国でのeディスカバリ業務のエキスパートである米国のスタッフと、クロスボーダーのエキスパートであるアジアのスタッフ、テクノロジー部門のスタッフが混然一体となって、新しいプラットフォームの開発を急いでいます。

ビジネスモデルの変革

新しいAI Reviewのソフトウェアで実現したいと考えているのは、米国のドキュメントレビューにおける、ビジネスモデルの変革です。通常訴訟支援の世界で、証拠を探すためのドキュメントレビューを行う際、レビューアーが証拠を探すためにかけた時間を人月フィーとしてチャージすることが通常です。

何故人月フィーのチャージが通常か。それを理解するためには、レビューという業務の難しさを知る必要があります。訴訟毎に異なる証拠探しのためのプロトコル(どのようなドキュメントを証拠として探すのか、弁護士が定めた方針・ルール)に沿って、様々な種類のドキュメント(メール、ワード、エクセル、パワーポイント、PDFなど)を読み込み、証拠かどうかの判断を下していくわけですが、ドキュメントの中に書かれている内容や読解の難しさ、長さも文書によってことなります。また訴訟の当事者となる会社や業界によって、書かれている内容も異なります。従って事前にどのくらいのスピードでレビューを進めることが出来るのか、予測することが困難であるため、レビューアーが実際に動いたコストをベースにクライアントにチャージを行うモデルを選択せざるを得ない、というのが実情です。

しかし、レビューする速度を言語処理の技術により、一定のスピードに保つことや、読解の困難さを事前に正確に判断することが出来れば、ドキュメントの枚数でチャージをするというビジネスモデルが成り立ちます。データの量がどんどん拡大している現状において、コストを事前に正確に見積もれるドキュメントの枚数によるチャージは、クライアントにとっても望ましいはずです。ある業界においてプライシングやチャージのモデルを変えることは簡単ではありませんが、テクノロジーにより、実現できれば、強い武器になります。

知的プロフェッショナルの日常的な武器としてのAI

私がこの数年で実現したいと考えているのは、人が文書を読んで判断するという行為をサポートしつつ、部分的に機械によって代替するという世界です。言語処理の世界で多様な種類、多様な目的での判断を汎用的に解析するモデルを作ることは現実的ではありません。しかし、適応する分野ごとに学習を特化していけば、かなりの部分自動化が可能です。自動運転でいえば、まずはレベル2~3を、文書を読み判断するという知的プロフェッショナル判断の領域で、日常の状態にしていくことが最初のステップになるでしょう。リーガルテクノロジーの領域で、まずはそのような状況を実現します。

リーガルテクノロジーでのフェアネスの実現

訴訟大国と言われる米国における弁護士の存在感は、日本に住んでいたら実感する事は難しいかも知れません。米国のように多様なステートメントが混在することが前提となっている社会において、利害の調整を行う弁護士は一つの階級ともいえるポジションを占めています。米国大統領の多くが弁護士出身であることがそれを物語っています。しかし、訴訟の世界もIT化、ビッグデータ化、AI化の波は避けられません。FRONTEOという米国の出自ではないが、フェアネスの実現を理念として掲げる企業が、リーガルテクノロジーの聖地である米国で、新しいビジネスモデルのスタンダードを作る。これは我々の夢であると同時に、多様な価値を飲み込む米国らしい事でもあるのではないでしょうか。


FRONTEO eディスカバリ&フォレンジックサイト:http://www.fronteo-legal.com/
FRONTEO 人工知能KIBITについて:http://www.fronteo.com/kibit/